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日記です。
父親と旧知の方との会話。
「『もしもし』っていう第一声を聞いただけで、あー奴の息子だなあって思ったよ」
声や話し方がそっくりだそうです。
これが多分10年前くらいだったら多分3kmから5kmの距離の家出の理由になったでしょう。
それくらい嫌なことだ。
父と似ているというのが。
父親に対して冷たいのではないか、と指摘された。
確かに彼とはほとんど会話をしないし、避けて生きてきた。
仲が良かったのは弟の方で、あいつはいつも父に付き合ってあげていた。
僕は誘われても断るし、会話も続かない。
父の喋り方なんて知らない。
だけどそっくりだなんて言われてしまう。
数年前に父は自費で詩集を出版した。
勿論僕は読まないし、その事実すら恥ずかしくてどうしようもない。
会う人会う人に「持ってるよ」だの「読んだよ」だの、あげく「感動したよ」
だの言われて困る。
その度に丁重に「すいませんが、捨てて下さい」とお願いする。
そりゃ冷たいって言われるな。
僕のお祖父ちゃんは父が10歳の時に亡くなったそうだ。
僕はお祖父ちゃんを知らない。
父は「父親」をほとんど知らない。
僕は父と一緒にいると「男」が分からなくなる。
僕は男も父もどうでもいいと思っていたけど、
最近はどうにもこうにも男で父でしょうがない。
一応「詩集」は簡単には目を通していることを最後に書いておく。
パラパラっとめくっただけだが。
なんというか鏡を見るということは非常に勇気のいることなのだな。