jthirtyの日記

ちょっと待って

●荻窪で

毎日少しずつの片付けは永遠に終わらない、との見出しを新聞の雑誌広告で見かけ、確かにその通り!と頷きつつ、結局は少しずつ永遠に終わらない片づけをする日々。

そして整理整頓にとって最も道を阻むもの、「思い出」についつい浸ってしまい、こうして日記を書いている。


古いカセットテープの一群は人やレンタルで借りたCDやレコードをダビングしたもの。
もしくはウォークマンで聴く為にテープに落とした自分の所有CDなど。
今となってはもう聴かないものもたくさんあるし、別のフォーマットで買い直して側に今も置いてあるものもある。
一応、現在もカセットが聴ける環境にはあるが、多分、この先特別な何かがなければわざわざカセットで聴くことはない。
ここは本当に「ない」と強気に結ばなければ、その曖昧な「特別な何か」の為に永遠に部屋は片付かない。

特別な何か、ってなんだい。

時代で言えば軽く20年前のこと。
20年という数字にいつも腰を抜かしそうになるけども最近はだいぶ慣れた。


レンタルで一番利用していたのは荻窪にあったお店。
洋楽も輸入盤とかもあったし、邦楽も細かく網羅していたと記憶している。
当時、練馬区民(中村橋)だったのになぜその店に通っていたかというと、
荻窪の予備校に通っていた友だちが教えてくれたからだ。
そして品揃えもさることながら一気に10枚レンタルできるのも有難かった。

中村橋から荻窪まで電車で行こうとしたら大変だけど直線距離をバスで行けばあまり遠くない。
僕はいつも自転車でそのお店まで通っていた。
30分くらいの距離だったろうか。
ウォークマンでジーザス&メリーチェインを爆音で聴きながら自転車こいで(危ないなあ・・・)通っていた光景を今でも鮮明に覚えている。


新譜とか中古とかもWAVEやらレコファンやらで必死に買って、買っても買ってもまだ聴きたくて。
荻窪で毎回10枚レンタルして聴いて、聴いても聴いても終わらなくて。
あれもこれも聴いている、誰よりも聴いていたい、そんなことだけでもしかしたら人よりも秀でることができるかもしれないと思っていた。
そんな貧相な自意識だけでつくられた風景にはいつも自分ひとりしか写っていない。

本当は音楽なんかよりも女の子が欲しくて欲しくてたまらなかった。
だけどその中に入っていく術を知らない。
女性との間合いを取る為のほどよい付き合い方が分からなくて、0(ゼロ)か100かでしか動くことが出来ないのだ。
女性を前にすると何時間でも無口で通すか、何も喋らずに押し倒すのどっちかという(モノの例えです)極端な行動になってしまう。
犯罪者にもストーカーにもならなかったのは奇跡だ。



学生時代を経て、再び荻窪を頻繁に訪れるようになったのは20代後半のある時期。
ある時期とは無職だった時期のことでその頃は石神井公園に住んでいた。
で、仲の良かった友だちも偶然無職で彼が荻窪在住だった為よく遊んでいたのだ。
石神井公園と荻窪もバスで行くと近い距離である。
日々電話をしたり、面接を受けたり、履歴書を書いたりしても時間が余ってしまう。
そのタイミングでどちらからともなく電話をかけ、暇を確認し、石神井公園か荻窪で時間を潰していた。

いつもの中華料理屋で定食を食べて、ゲームセンターで数百円を使い、古本屋をハシゴして、喫茶店、たぶんルノアールかなにか、で延々と話す。

一応真面目に就職活動の成果を話し、愚痴を言い、溜息をつく。
あとは音楽や映画や漫画の話。
サニーデイサービスは特に二人とも大好きで新曲が出れば大いに話に花が咲いた。

そして女の子にどうやったらもてるのだろうかという話。
ルノアールの綺麗なお姉さんの制服姿を横目でチラチラ眺めながら中学生レベルの話を延々と話していた。

夕方になるとそれぞれ妻が仕事から帰ってくる。
二人、トボトボと力なく家に帰っていった。
Theピーズの音楽がずっと頭の中で鳴っていた。



●大人になれば

41歳。
結局、まだちゃんと気持ちを伝える術が分からない。



スカートのアルバム「エス・オー・エス」が好きで、ここ何日かまた聴いていたら。ちょうどスカート澤部くんが弾語りライブをネットで配信してるところに出くわす。

彼はまだ23歳と若い。
自分の曲の他にYMOや岡村靖幸を歌っていた。
若いのになー、という言葉がどうでもいいことは知っている。ほんとに。

20歳頃、ライブハウスで自分も言われることがあった。
「若いのによくこんなバンド知ってるねー」

20年経って、その言葉が自分に憑依するとは夢にも思わず。

でも、今でも例えば中川五郎さんのライブなどに行けば僕なぞ最年少の部類である。
60〜70歳の先輩に「若いのになんでこんなとこ来とるん?」
そして当の中川五郎さんはいつでも女の子のことを嬉々としてまるで子供のように話す。

僕はそれがとっても好きだ。

好きだ。


って。

ほんとにどーなっちゃってんだよ。