jthirtyの日記

ちょっと待って

遠藤賢司を聴きに福岡へ行く(後編)

●2月26日日曜日

26日。

午前中、日課のジョギング(今日は5?)をこなす。
午後、昼を食べて荷物を急いで詰め込んで新幹線。ipodでは勿論遠藤賢司「ちゃんとやれ!えんけん!」
ドキドキする。色んな意味でドキドキする。

福岡に行くのは三回目。
その昔、椎名林檎率いる発育ステータスのライブが初。対バンのロレッタセコハンに痺れた。妻と二人で東京から見に行った。
次が2006年、カーネーション「WILD FANTASY」のツアーで。長女が産まれた年の9月のこと。
大好きなカーネーション、やはり広島でのライブがなく、わざわざ福岡まで行ったのだ。これはもちろんひとりで。
それ以来なのかと思うと随分久しぶりなんだな。でも、天神のあの辺りの景色はしっかりと記憶に残っている。


駅から十分ほど歩くと今日の宿。トラストインに着く。カプセルとビジネスの中間みたいなホテルでとにかく安かった!
男一人が寝るだけなら十分な広さと設備。これはいいな。キャナルシティのすぐ近く。

ボギーさんの書きこみに興奮する。もう戦いは始まっている。そうだ今夜は「純音楽大合戦!!!」なのだ。武者震いだ。

中州から天神まで歩く。前回もこの辺りを歩いたな。ほんとによく憶えてる。
街の中を川が流れていて、なんとなく広島市内に似てるなあと思った。前回そう思わなかったのは、まだあの頃はあまり広島市内に出かけてなかったからだろう。


広島にいても、福岡にいても、いや全国どこに行ってもつい覗いてしまうのがレコード屋。悲しい性である。
黄色と赤色のタワレコに赴いてみたが残念ながら改装前の閉店状態であった!うわーと軽くへこむ。別に何か買いたいものがあったわけじゃないんだけど。
そして大きく貼られた九州発アイドルグループ「LinQ」のポスターを見ながら、「九州に来たなあ」と実感するのであった。

初めて行くライブハウスVooDooLoungeの場所を確認。昭和通りから看板が見えた。リハ中かな?もっと近くに行ってみようかな?
もう興奮が止まらないけど、あと数時間であそこでエンケンが見れるのだ。踵を返して、JUKE RECORDSを探しに行く。
福岡で面白いレコ屋ありますか?と質問して教えて貰ったお店。二階にある為か看板を見過ごし何度も通りを行ったり来たりした。なんだVooDooのすぐ近くだ。
ぎっしり詰まったCDやレコードを物色するがどうにも集中できない。この後のことばかり考えてしまうよ。
お土産に何か買って帰りたかったし、何枚か気になるCDもあったのだけど退散する。



●始まった!!

そして開場したVooDooへ。
初めて遊びに行くライブハウスは緊張する。初めては何度でも緊張する。そして誰も知ってる人がいないという環境。戦いだ、今夜は。
ちょっとトロピカルな(ラウンジ?)雰囲気のお店。いいなあ。他であまり見たことないような感じ。DJの選曲もイイネ。

といきなり入口付近で今回唯一知ってるボギーさんに遭遇。安心したなあ。
エンケンさん、リハ凄かったよなどなど話を聞く。もー、どうしよう!!どうなっちゃうんだろ!!

ビールを飲んで待つ。

一番手はマルツカ道。そう今回は前座も主役もなんにもない。三者による闘いなのだ。
ステージの上を見上げると「純音楽大合戦!!!」と書いた紙が貼られている。ステージ後方はヨコチンレーベルのあのマークが掲げてある。
そして天井ではミラーボールがクルクルと回っている。場内では「マリリン・モンロー、ノーリターン♪」なんて流れてるしさ。

ここ最近のブログやライブ会場で配られた「ハイコレ通信」にも書かれているボギーさんとエンケンさんとの出会い。
そしてボギーさんとマルツカさんの出会い。これらを読んだ上で今日のイベントを思うと関係ないこっちまで胸が熱くなる。

そんな胸の熱さがマルツカ道さんの歌からも溢れていた。ストレートな弾語りだけど、言葉がザクザクと切り込んでくる。
きっとマルツカさんとボギーさんが出会って、憧れのエンケンさんとこうやってステージに立つなんて誰も想像してなかったことかもしれない。
20年前から今日までのことはほんとに誰も分からない。ひそかに胸に抱いていたかもしれないけれど。
想像もできなかった不幸もたくさんあるけど、こういった日があると思うと年もとるもんだなあと最近つくづく思う。
楽しいこと苦しいことなにが起こってもいい、一日でも一時間でも長く生きたいと思う。
おっさんになったのかなあ、まーいいや、知らない。生きていれば大丈夫。



ノントロッポ


一転してボギーさんのバンド、ノントロッポの登場。赤い衣装のボギーさん、最初からもう意識がどこかに飛んでるかのような表情。
ぶっ飛んでいるのに妙にさっぱりした顔。
さっきのマルツカ道さんもノントロッポエンケンも音楽の様相は違うけど、今日はそんなことが気にならなかった。全部が繋がっている。
自分もなんかしら繋がっているから今夜ここのいるんだと強引に解釈する。

ノントロッポは最高のダンス音楽。狂騒の天国。頭がおかしくなりそうだった。初めてライブを体験したけど、事前にyoutubeなんかで予習しておかなくてよかった!初体験はいきなりに限る。
音楽が「躁」のテンションでどんどんと上昇していくのに時々フッと悲しくなる瞬間があった。すごい楽しく踊ってるのになんか涙が出そうで足がもつれそうな。
昔見たフィッシュマンズのライブを思い出していた。5人でやってた頃のだ。あの感じが蘇ってくる。不思議な夜だった。



●不滅の男

いよいよエンケン
・・・の前にフロアにはゴザがひかれた。少しでも多くの人にしっかりと見えるように座ってほしいという意向だそうだ。
ゴザの上にみんながギュウギュウ詰まって体育座り。ぐるりと周囲を見渡してみる。なんとなく同世代の人が多そうだけど、僕より年配の人もまあまあいるようだし、若い人も多い。
なんだかわからないごちゃごちゃした客層っていいよね。お客が色になっちゃいけないよ。

幕が開く。

アンプと対峙しながらギターを弾いている。
「為に、音よ言葉よ俺の心に突き刺され」をずっと客席に背を向けたまま歌った。
この太い音。エンケンさん以外の誰でもない音。腹にずんと響いた。

そして「ちゃんとやれ!えんけん!」だ。
ギターを弾きながらドラムセットに座ってドラムも叩く!!
ものすごい音音音!!!
この一曲で普通のバンドのワンステージ分くらいの力を使いきったのではないかというほどの迫力。

そしてアコースティックに持ち替えて何を歌うのかとわくわくしていたらなんと「雪見酒」!!予想もしてなかったんで驚いたなー。
「カレーライス」「歓喜の歌」と続く。静かな歌でも激しく太い。

MCではゆっくりとやさしい口調で喋る。一言一言何かを探すように。
ジューダス・プリーストやAC/DCから田原俊彦郷ひろみにまで話が及ぶ。
どこまでも激しく、どこまでも可愛い、それがエンケンさんかもしれない。

「可愛いってのはいいよねー」という話で、「アイドルはすごく一生懸命でいいよね」とエンケンさん。
エンケンさん指すところのアイドルとは違うかもしれないけど、ここ最近アイドル狂いの僕としては個人的にそうそうと頷く。
可愛いを正当化させることはものすごい「芸」だもの。
で、その可愛さに対し、斜に構えることなく屈するのも大事なことなのだよ(これは僕の勝手な自論だけど・・・)
ということでエンケンさんから福岡に来てボギーさんに会うこと、そしてアイドルまで僕の脳内ではどんどん繋がっていく。

「不滅の男」「踊ろよベイビー」「満足できるかな」「夜汽車のブルース」

新作からもほとんどやった。
ピアノ弾語りの「もうちょっとだけ頑張ってみようかな」と「美しい女」はできなかったけど、「もうちょっとだけ…」は歌の背景を語る形でほぼ歌ったのと同じようだった。



あっという間に時間が過ぎていった。
アンコールの「夢よ叫べ」で終わってしまった。


来てよかった・・・。ただそれだけ。

歌ってない時は妙に小さく見えてしまうエンケンさんの勇姿をしっかりと目に焼けつけた。
ジャンルなんて関係ないと書くのは簡単だが、それを40年もやってるのは並大抵のことではない。
感動の涙を流しながら自分の胸に聞いてみる。「お前はそれをやってるか?」と。
歌を歌う人はそれだろうし、みんなそれぞれの「それ」がある。
やれてないかもしれない・・・と弱気になってしまうこともある。
それに対し、エンケンさんの歌は「がんばれ!」って励ますような類のものではない。
「やってるか?」と永遠に疑問を投げかけてくる。だから優しいのだ。

エンケンさんにサインを貰い、握手をしてもらった。緊張してあまり言葉が出なかった。

ボギーさんにもサインを貰って、また広島で会いましょうと言って別れる。


●夜

ひとりになって帰りは地下鉄に乗って帰った。耳も心もゴーッッて音が鳴っている。
博多に来たのにラーメンの気分にならず、うどんを食べてからホテルに帰った。
あ、カレーライスにすればよかったかな。

上階に大浴場と露天風呂があるので浸かりに行く。
ちょうどだれも居らず貸切状態でぼんやりする。露天に入って福岡の夜空をボーっと眺めた。

やけに漫画が揃っている休憩室で缶コーヒーを飲みながら休む。
そろそろ寝るかと思ったらテレビでアイドル特集の番組が始まって(笑)ついつい最後まで見てしまった。

ベッドに入り、思いついたことを数行メモして、「ハイコレ通信」のボギーさんの熱い文章を読んで、エンケンさんの「もうちょっとだけ頑張ってみようかな」と
「美しい女」の二曲を聴いてから寝た。


●2月27日月曜日の朝

福岡の朝。月曜日の朝。

ホテルから少し歩いてドトールで朝食。仕事前のサラリーマンだらけの朝。僕は今日はお休みです。
ドトールでコーヒーが飲めるってのは都会ってことだなあ。
街行く女の人がみんな美人に見える。少し雨が降っている。

昼前に駅でお土産を買って帰りの新幹線に乗った。
ipodを立ち上げて何を聴こうかと暫し考える。
そして平賀さち枝の「さっちゃん」を選ぶ。
春は近い。